2026年5月にバンコクで開かれた食品見本市「THAIFEX Anuga Asia 2026」で、タイの老舗調味料メーカー各社が事業戦略の大転換を打ち出した。背景にあるのは都市化、単身世帯の増加、そしてSNS発の越境フュージョン料理の人気だという。各社は「ひとつの伝統的カテゴリーに頼る時代は終わった」との認識で一致。多忙なタイの都市生活者向けに、調理の手間を省いた高利便性商品や高価格帯のプレミアム商品へと舵を切るという。タイ国内の調味料・ソース市場は2026年に585億バーツ(約2,516億円)規模に達する見通しで、各社はこの拡大市場でのシェア獲得を競っているという。細分化と越境ブランド戦略©︎Unsplash老舗の Chua Hah Seng(チュアハーセン)は、激しい国内競争を避けるため、企業ブランドを用途・価格帯別のサブブランドへと細分化したという。プレミアム向けと低コストの卸売向けを切り分け、それぞれの市場に最適化する戦略だという。同社は国際基準への適合を進め、地元の定番品を世界へ輸出できる商品へと転換させようとしているという。さらに、従来型の広告から体験型マーケティングへと軸足を移すという。都市部の飲食店とのオフライン・オンライン連携を通じ、生活者との接点を自然な形で広げる狙いだという。1978年から天ぷら粉一筋だった Gogi(ゴーギー)も総合調味料市場へ参入。手間も後片付けも最小限を求める「ミールニマリスト」と呼ばれるタイの若い都市生活者層を取り込もうとしているという。国境を越えて混ざり合う味覚©︎Unsplash大手の Thaitheparos(タイテパロス)は16種の新商品を一斉投入したという。屋台料理を再現した下ごしらえ不要のベースと、海外フュージョン向けの2路線に分けた点が特徴だという。輸出大手の Exotic Food(エキゾチックフード)は、欧米の主流スーパーへの直接展開で成果を上げ、チリソースに事業を集中。売上の89%を同分野が占めるまでになった。生活者の味覚が国境を越えて混ざり合うなか、各社は世界の調味料市場で真っ向勝負を挑んでいるという。ローカルメモタイの食卓は「作る」より「足す・かける」文化だ。屋台や食堂が安く手軽なため、家庭で本格的に調理する人はもともと多くない。そこへ単身世帯と高齢化が重なり、ひと手間を省く調味料の需要が一気に高まった。日本のつゆやタレ文化と通じる部分も多い。SNSで世界の料理が日常的に流れ込む今、タイの老舗が「伝統の味」をどう更新するかは、同じ課題を抱える日本メーカーにも示唆が大きいと感じる。参考URLThe Nation Thailand記事https://www.nationthailand.com/business/corporate/40066808TOP Image©Unsplash