概要タイ政府は、国民のナトリウム過剰摂取に起因する健康問題に対処するため、ナトリウム含有量の多い加工食品を対象とした「ナトリウム税」の導入を計画している。WHO推奨値(1日2,000mg)の約2倍に達するナトリウム摂取により、高血圧や腎臓病が深刻化し、医療費が増大していることが背景にある。この税制は、メーカーに製品の減塩を促すことを目的としており、2017年に導入された砂糖税をモデルとしている。医療専門家からは健康改善効果への期待が寄せられる一方、事業者や消費者からは物価上昇への懸念や、実効性に対する懐疑的な声も上がっている。国民の健康危機と税導入の背景©Unsplashタイでは、国民の1日あたり平均ナトリウム摂取量が約3,600mgと、WHOが推奨する2,000mgを大幅に超えている。成人の約3分の1が高血圧を患い、約800万人が慢性腎臓病、20万人以上が末期腎不全を抱えるなど、健康状況は深刻だ。塩辛い味を好む食文化が深く根付いていることも一因とされている。 こうした状況を受け、タイ当局(物品税局)は、スナック菓子などの包装済み食品を対象とした段階的なナトリウム税の導入を決定した。第一段階としてスナック菓子、第二段階としてインスタントラーメンなどが検討されている。メーカーに製品の成分再配合を促し、国民の健康増進と医療費削減を目指す。なお、屋台やレストランなどの外食は対象外となり、低所得者層の負担に配慮している。期待と懸念が交錯する現場の声©Unsplash医療専門家は、この税制により今後10年間で脳卒中や心臓病、腎臓病などの患者を15万人以上減らし、1万人以上の死亡を防ぐとともに、国家の医療費を約31億バーツ(約130億円)削減できる可能性があると試算している。しかし、現場では懐疑的な見方も多い。飲食店主からは「客は塩辛い味を好み、減塩を求められたことはない」との声が聞かれ、事業者からはコスト増への懸念が示されている。消費者からも、価格が多少上がっても食習慣は変わらないのではという意見や、税よりも食生活に関する教育を重視すべきだとの声が上がっている。ローカルメモタイのナトリウム税導入計画は、根深い食文化と公衆衛生上の要請との間でバランスを取るという、多くの国が直面する課題を象徴している。2017年の砂糖税という先行事例があるものの、塩味は甘味以上に味の根幹をなすため、消費者の行動変容を促すハードルはより高い可能性がある。課税対象が加工食品に限定され、外食や屋台文化が主流のタイにおいて、その効果がどこまで波及するかは未知数だ。参考URLCNA記事 https://www.channelnewsasia.com/asia/thailand-sodium-tax-food-health-5957671TOP Image©Unsplash