概要近年のアジア地域ではクラフトビール醸造所を中心に、機能性を付加したビールの開発・販売が進んでいる。「低糖質」や「ノンアルコール」など余計な要素を排除するだけでなく、「プロバイオティクス」や「気分向上」の効果を加えたビールは、健康志向の強いZ世代を中心に注目を集めている。タイNo.1の低糖質ビールタイに拠点を置くFullmoon Brewworksの創業者兼ヘッドブリュワーであるSukij Thipatima(スキジ・ティパティマ)氏は、「大手醸造所と比べて、クラフトビール醸造所は原料の調達やレシピの調整がしやすく、機能性ビール開発に取り組みやすいのです」と語る。同醸造所の低糖質ビール「SayPlay Cold IPA(セイプレイ・コールドIPA)」は、タイにおけるクラフトビール売上で2年連続トップに輝いた。1杯あたり12~15gの糖質を含む通常のビールと比べ、SayPlay Cold IPAの糖質はわずか2.5gに抑えられている。©2021 FullmoonBrewworks.タイではアルコール飲料の広告規制の影響で、「低糖質」を前面に出すことができない。そうした状況でも、この製品は売上トップに躍り出た。Thipatima氏によれば、こうした機能性ビールを最も高く評価しているのはZ世代だという。広告で機能性を押し出さなくとも、Z世代の消費者は製品ラベルを積極的にチェックする傾向がある。同醸造所は2025年10月、ノンアルコールビール「SayPlay Nano IPA(セイプレイ・ナノ IPA)」も発売した。同ブランドのビールは日本や台湾、香港、オーストラリア、ニュージーランド、カンボジアなどのアジア地域、およびロシアに輸出されている。シンガポール発のプロバイオティクスビールシンガポールでは2022年3月、シンガポール国立大学(NUS)の研究者と同大学発のスタートアップ企業Probicient(プロビシエント)によって、プロバイオティクス含有ビールが開発された。この「Red Billion Probiotic Raspberry Sour Beer(レッドビリオン・プロバイオティック・ラズベリーサワービール)」はアルコール度数4.5%で、1杯あたり10億個の乳酸菌ラクトバチルス・パラカゼイを含む。さらに、シンガポールの醸造所Zesty Gut(ゼスティ・ガット)は特許技術により、新たなプロバイオティクス含有ビールを開発した。Oh My Guts(オー・マイ・ガッツ)ブランドから2025年3月に発売された「OMG Probiotic Beer(OMG プロバイオティック・ビール)」はアルコール度数4.2%で、330mlボトル1本あたり10億個のプロバイオティクス菌を含む。©2025. Zesty Gut Pte Ltd.同醸造所のマーケティングマネージャーであるAnn Nguyen(アン・グエン)氏は、「このビールは消化機能と栄養吸収を促進し、飲酒後の膨満感などの不快症状を軽減します」と説明する。ビールなのに“アルコールに頼らず”気分向上イギリスを拠点とする醸造所Collider(コライダー)は、機能性キノコと活性植物成分を独自にブレンドしたノンアルコールビールを開発した。©Collider Brew Co Ltd同醸造所の創業者Harry Cooke(ハリー・クック)氏によれば、この独自配合は「Unwind Blend(アンワインド・ブレンド)」と名付けられ、アルコールなしでリラックスした気分をもたらす。Colliderのビールは、アダプトゲンであるレイシ(霊芝)のほか、L-テアニンとアシュワガンダを含む。これらの成分はいずれもストレス低減をサポートしてくれる。ローカルメモアジア、特にタイやシンガポールでは、高温多湿な気候でビールが広く親しまれている一方、健康志向も急速に高まっている。そんな中で「体に良いビール」というコンセプトは、罪悪感なく楽しみたいという消費者のニーズにぴったり合致するのだろう。タイの低糖質ビールが、その特徴を宣伝せずとも売上1位になったという事実は、消費者がいかに賢く、本質的な価値を見抜いているかを示している。単に酔うためではなく、ライフスタイルの一部としてスマートにお酒を楽しむ文化がアジアの若者を中心に根付きつつあると感じる。参考URLFoodNavigator誌記事https://www.foodnavigator-asia.com/Article/2025/12/02/functional-beer-the-next-wave-in-craft-brewing-innovation/Top Image:©Unsplash