概要ベトナムは世界最大のロブスタコーヒー生産国であり、年間150万トン超を輸出する。しかし気候変動による洪水や干ばつ、中部高原での急激な地価上昇、そして2025年7月に導入・同年末に廃止された農産物への付加価値税(VAT)問題が重なり、コーヒー農家の収益が悪化。供給量が減少しつつあり、世界のコーヒー価格を再び押し上げるリスクが高まっている。現在は価格が落ち着いているが、12〜24か月後には消費者価格への転嫁が見込まれる。気候・地価・税制が生む供給減少の構造©︎Unsplashベトナムのコーヒー生産を直撃しているのは気候変動だけではない。2025年秋の深刻な洪水と豪雨が中部高原の収穫量を大幅に低下させた一方、インフラ整備による地価高騰が農家を農地売却へ向かわせている。収益性の低下と土地需要の高まりが重なり、農地がコーヒー栽培から離れる流れが加速している。さらに2025年7月に導入された半加工農産物へのVAT5%が輸出業者に多大な資金負担と事務処理コストを生じさせた。同税は2026年1月に廃止されたが、その間の混乱は業界に大きな打撃を与えた。 ネスレベトナムの法人渉外部長フン・クアット氏によれば、2025年のベトナムコーヒー輸出額は89億2,000万ドルと前年比58.8%増を記録した。しかし中長期的には気候リスクと生産コスト上昇が続く見通しであり、ロブスタへの依存度が高いヨーロッパ・オーストラリア・アジアの中小規模ロースターが最初に影響を受けると予測される。大手メーカーや一般消費者への価格転嫁には1〜2年程度かかる見込みだ。消費者・小規模ロースターへの影響と今後の展望©︎Unsplashベトナムのコーヒー農家・輸出業者が推進する「The Coffee Farmer Project(コーヒー農家プロジェクト)」の創設者カルディ・タイ氏は、安定したグリーンコーヒーを低コストで調達してきた中小ロースター、とくにロブスタを主軸とするブレンド向け業者が最も早く打撃を受けると指摘する。同氏は技術導入(発酵管理・乾燥システム改善)による品質向上の有効性を認めながらも、コスト圧力を和らげるには産地との長期的な協力関係こそが鍵だと強調する。また「ファイン・ロブスタ」の品質向上がスペシャルティ・アラビカの代替として世界的に注目を集めており、今後はベトナム産コーヒーが量から質・トレーサビリティ重視への転換期を迎えるとみている。ローカルメモベトナムの中部高原(ダクラク省など)はコーヒー農業の一大拠点であり、農村コミュニティの生計を支える柱だ。近年、ホーチミン市やハノイからの投資マネーが地方の農地にも流入し、農家が先祖代々の土地を手放すケースが増えている。農村では「農業だけでは食えない」という声が広がっており、若者の都市流出も深刻だ。ロブスタの一大産地が抱えるこの構造的な問題は、単なるコーヒー価格の話にとどまらず、途上国農業の持続可能性そのものを問う課題だといえる。参考URLFoodNavigator記事https://www.foodnavigator.com/Article/2026/03/06/vietnam-coffee-turmoil-set-to-hit-global-prices/TOP Image©︎Unsplash