2025年、世界の食文化は大きな転換点を迎えている。健康志向の高まりは高プロテイン食品やウォーターエンハンサーの市場拡大を後押しし、GLP-1薬の普及は食生活そのものを変えつつある。一方で、カカオ価格の高は代替品開発を加速させ、SNSから生まれたドバイチョコレートは瞬く間に世界的ブームとなった。これらのトレンドは、私たちの「食」の未来を映し出す鏡だ。世界で今、何が起きているのか。「SEKAI MARKETING」で取り上げた記事をもとに、11の重要トレンドから読み解いていこう。世界の食の最前線!国内外市場での新商品開発、新規事業開発、コンテンツ開発、マーケティング戦略などの各種業務にお役⽴ていただけます。【2026年版】FoodTrendReportの詳細はこちらから↓高プロテインプロテインブームが止まらない。世界の高プロテイン食品市場は2025年に567億9000ドル(約8兆8900億円)に達し、2034年までに倍増する勢いだ。フィットネスへの関心の高まりだけでなく、忙しい現代人が外出先で手軽に栄養補給したいというニーズが市場を押し上げている。イギリスでは消費者の37%が日常的にプロテイン摂取を優先するまでになった。プロテインバーやプロテイン入りヨーグルトはもはや定番だ。植物性プロテインや、空気からプロテインを作るフードテック企業が新たな市場を切り開いている水分補給・ウォーターエンハンサー水に加えるだけで味も栄養もアップグレードできる“ウォーターエンハンサー”の市場が急拡大している。2025年に21億ドル(約3290億円)規模から、2035年には55億ドルへと2.6倍の成長が見込まれる。背景には、砂糖入り飲料からの脱却と健康志向の高まりがある。ミレニアル世代とZ世代が市場を牽引しており、DryWaterやWaterDropのようなビタミンや電解質を配合した機能性エンハンサーが人気だ。アダプトゲンやノートロピクス、植物エキスを配合した革新的な製品も続々登場している。低カロリーでカスタマイズ可能、持ち運びに便利なアイテムは、現代人のライフスタイルに完璧にフィットする。サブスクリプションモデルによるD2C販売も拡大中だ。GLP-1・オゼンピック食欲抑制効果で注目されるGLP-1受容体作動薬も食品業界に大きく影響している。アメリカ成人の成人の約8人に1人(12%)がGLP-1受容体作動薬を使用したことがあり、そのうち6%が現在も使用していると回答している。利用者の1日のカロリー摂取量は平均700カロリーも減少。食料品支出は6%ダウンし、加工食品や砂糖入り飲料、牛肉の消費が大幅に落ち込んだ。食品メーカー各社だけでなく小売企業も対応を始めている。コストコでは2025年10月より、医師の処方がある場合にオゼンピックの購入が可能となった。また、イスラエルのスタートアップが肥満治療薬として自然由来の成分を開発するなど、減量薬を求める動きは今後も加速しそうだ。着色料排除が進む一方、継続の動きも合成着色料がついに終焉を迎えるかもしれない。アメリカFDAが石油由来の合成着色料のうちFD&C Red No.3以外の6色を2025年末までに廃止する計画を発表した。子供の健康への懸念と「Make America Healthy Again」イニシアチブが後押しする形だ。クラフトハインツやハーシー、ゼネラルミルズなど大手企業が次々と対応を表明している。これらの動きにより、天然着色料市場は2025年の20億ドル(約2940億円)から2035年には40億ドルへと倍増する見込みだ。一方でM&M’sを製造するMarsは「安全性に問題はない」として合成着色料使用の継続を表明するなど、法規制に拮抗する動きも見られる。今後の菓子業界の対応に注目が集まる。カカオフリー・代替品(カカオ価格の高騰)カカオ価格は2024〜2025年に史上最高値の1トンあたり12,000ドル(約176万円)超を記録。西アフリカでの気候変動と病害の蔓延が、世界のカカオ生産の約70%を直撃した結果だ。この危機が食品技術の革新を加速させている。ドイツのスタートアップ・Planet A Foodsは、オーツ麦、ひまわりの種、シアバターを発酵・焙煎した「ChoViva」を開発し、これを使用した商品がイオンでも発売され話題を呼んだ。カカオバター代替品市場は2025年の14億ドルから2035年には28億ドルへと倍増する見通しで、持続可能性への関心とEUの森林破壊規制強化がこの動きをさらに後押ししている。チキン需要の台頭鶏肉が世界の食卓を制覇しつつある。2034年までに世界の鶏肉消費は1億7,300万トンに達し、新たに消費される肉類の62%を占める見込みだ。アメリカでは2025年、1人当たりの鶏肉消費量が102.7ポンドと、牛肉の58.5ポンドを大きく引き離す。需要が高まる背景には、インフレが続く現代において、手頃な価格とおいしさ、牛肉や豚肉より高いタンパク質比率を誇る栄養成分にある。アメリカの大手メーカーや外食チェーンではチキンに特化したメニューの開発が続き、競争は激化している。Z世代のライフスタイル(デジタル疲れ、ドゥーム・スペンディング)デジタルネイティブのはずのZ世代が、デジタル疲労に苦しんでいる。73%が疲弊を訴えながらも、1日平均7.2時間をオンラインで過ごすという矛盾を抱えているのだ。2025年のPinterestでは「デジタルデトックスのアイデア」の検索が72%増加したが、実際のデトックス試みの72%は失敗に終わっている。この閉塞感の中で生まれたのが「ドゥーム・スペンディング」。経済や政治への悲観論に対処するための衝動買いだ。Z世代は2025年のホリデーシーズンに前年比21%増の支出を計画しており、41%がドゥーム・スペンディングを認めている。背景にあるのは「金融的敗北主義」。住宅購入や家族形成といった従来のライフスタイル目標が達成困難と感じ、貯蓄よりも支出に傾く。美容、ファッション、旅行、体験への支出が他世代より高く、「Buy Now, Pay Later」の利用も一般化している。ミニミール・食事のスナック化若者の間で1日3食という常識が崩れ始めている。35歳未満の消費者の74%が1日に数回以上間食し、50%が少なくとも週1回はスナックを食事代わりにする時代となり、Z世代とミレニアル世代の71%は、外出先で楽しめる食事を好んでいる。ユニリーバのクノールブランドはパスタスナックなどのミニミールで成功をおさめており、食品大手各社がミニミール市場への参入を進めている。この傾向は物価上昇とライフスタイルの変化により加速した。ミニミール市場は2024年の563億ドル(約8兆6000億円)から2028年には772億ドルへ成長する見込みだ。忙しいスケジュール、1日平均2時間以上のSNS時間、柔軟な食事スタイルを優先するZ世代とミレニアル世代にとって、伝統的な座って食べる食事は時間の無駄と捉えられているようだ。PB商品の拡大プライベートブランド(PB)の躍進が止まらない。アメリカでは2025年上半期にPB商品の売上が前年同期比4.4%増と、全国ブランドの1.1%増を圧倒。市場シェアは史上最高の金額ベース21.2%、数量ベース23.2%に到達し、2025年の総売上は2,770億ドルに達する見込みだ。世界的にも、PB商品は食料品全体の45%以上を占め、成長率は全国ブランドの2倍。消費者の約70%がPB商品を全国ブランドの良い代替品と認識し、半数以上が以前より多く購入している。抹茶・ほうじ茶抹茶ブームが欧米を席巻している。抹茶の市場規模は2025年に42億ドル、2029年までに64億ドルへと年率11.1%で成長する見込み。ソーシャルメディアの影響力、健康志向、そして日本への観光ブームが追い風だ。抹茶の緑色が見映えする上に健康志向の消費者にとっても理想的な素材となっている。しかし世界的な需要急増により、日本の生産が追いつかず供給不足が発生。そこで注目されるのが「ほうじ茶」だ。カフェイン含有量が低く(1杯7〜40mg)、スモーキーで滑らかな風味が特徴。2025年6月に検索ボリュームがピークを記録した。ドバイチョコレート2025年最大のスイーツ現象がドバイチョコレートだ。ピスタチオクリーム、タヒニ、カダイフをミルクチョコレートで包んだリッチなアイテムは、中東伝統デザートと現代チョコレートの革新的な融合といえる。2023年12月、インフルエンサーのTikTok動画により世界的ブームに火がついた。UAE単独でも2025年第1四半期に120万本以上を販売。リンツなど大手菓子メーカーが独自のドバイチョコレートを発売し、ドリンクやアイスクリームにアレンジした商品も多く見られた。しかし急成長により世界的なピスタチオ不足が発生し、M&Sやウェイトローズは販売制限を導入している。カカオ価格高騰の逆風の中でのブームという皮肉な状況も見逃せない。まとめ2025年の食トレンドは、健康志向と経済的現実のせめぎ合いの中で形成されている。高プロテインやウォーターエンハンサーへの関心は健康意識の高まりを示す一方で、GLP-1薬の普及やミニミールの台頭は、現代人の食生活が根本から変化しつつあることを物語る。カカオ価格の高騰や着色料規制といった供給側の制約は、代替品開発とイノベーションを加速させた。そしてドバイチョコレートのようなSNS発のトレンドは、食の楽しみ方が世界規模で瞬時に共有される時代を象徴している。これらのトレンドは単なる一過性のブームではなく、持続可能性、健康、利便性を重視する新しい食文化の到来を告げている。世界の食の最前線!国内外市場での新商品開発、新規事業開発、コンテンツ開発、マーケティング戦略などの各種業務にお役⽴ていただけます。【2026年版】FoodTrendReportの詳細はこちらから↓参考URL【タンパク質】https://finance.yahoo.com/news/high-protein-food-market-size-140000724.html?guccounter=1https://www.towardsfnb.com/insights/high-protein-food-market【ウォーターエンハンサー】https://www.factmr.com/report/water-enhancer-market【GLP-1】https://www.choicesmagazine.org/choices-magazine/submitted-articles/food-demand-in-a-post-ozempic-worldhttps://www.kff.org/health-costs/kff-health-tracking-poll-may-2024-the-publics-use-and-views-of-glp-1-drugs/【着色料】https://www.fda.gov/food/color-additives-information-consumers/tracking-food-industry-pledges-remove-petroleum-based-food-dyes【カカオ】https://supplychangecapital.substack.com/p/the-rise-of-novel-cocoa-alternatives【チキン】https://www.meatpoultry.com/articles/31310-global-poultry-industry-poised-for-growth-in-2025https://www.ers.usda.gov/data-products/charts-of-note/chart-detail?chartId=113119#:~:text=102.7%20pounds%20in%202025【Z世代】https://www.wearehuman8.com/blog/gen-z-in-2025-navigating-digital-exhaustion-in-a-digitally-native-world/https://fortune.com/2024/12/13/gen-z-doom-spending-holiday-shopping-doomscrolling/【ミニミール】https://www.edlong.com/why-snacking-hits-different-for-millennials-gen-z/【PB商品】https://www.foodbusinessnews.net/articles/28678-private-label-market-share-hits-all-time-highs【抹茶】https://www.researchandmarkets.com/reports/5896084/matcha-global-market-report【ドバイチョコレート】https://foodinstitute.com/focus/dubai-chocolate-trend-gains-momentum-despite-ongoing-cocoa-crisis/https://tastewise.io/blog/dubai-chocolate-trendTOP 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