中東情勢の不安定化を背景に、東南アジア(ASEAN)がグローバルなハラール食品市場の次なる成長エンジンとして注目されている。2026年4月にシンガポールで開催された食品・ホスピタリティ展示会「FHA(Food and Hospitality Asia)」では、倫理的アドバイザリーコンサルタント会社Dawn Horizon(ドーン・ホライズン)のCEO・デウィ・スラッティ氏が「安定した事業環境を求める企業はASEANに目を向けており、この地域が新たなハラール市場のリーダーとして台頭しつつある」と強調した。ASEANは11の多様な市場から構成され、インドネシアをはじめマレーシア、ブルネイなどにイスラム教徒の大規模消費層を抱える。各国政府もハラール認証の整備を加速させており、産業界・行政双方から域内連携への期待が高まっている。多様な規制整備が域内連携を後押し©︎Unsplashシンガポールのイスラム宗教評議会(MUIS=Majlis Ugama Islam Singapura)は昨年、88の海外ハラール認証機関を正式承認する新たな制度枠組みを導入し、国際的なアクセス拡大と規制強化を同時に実現したという。一方でムスリム少数国であるベトナムも、農水産物の輸出促進やムスリム観光客の受け入れを目的に政府レベルでハラール認証専担部署を設置するなど、積極的な市場開拓を進めているという。 インドネシアは2024年より国内で流通する全食品・飲料にハラール認証取得を義務化し、中小企業(MSME)向けには簡易認証制度も導入したという。同国貿易官・ビリー・アヌグラ氏は「インドネシアは世界のハラール市場で少なくとも15〜17%のシェア獲得を目指している。ハラール義務化を貿易障壁ではなく、業界の統一基準を実現するための手段と捉えている」と述べた。今後、同国の規制整備の経験が地域・グローバルレベルのハラール認証ハーモナイゼーションを牽引する可能性もある。11市場の多様性が生む事業機会©︎Unsplash専門家は各市場の特性を活かした段階的な地域展開を推奨するという。大規模なムスリム消費者層を求めるならインドネシア、整備された規制環境を重視するならシンガポール、ファーストムーバーとして新市場を開拓したいならベトナムやカンボジアが有力候補となる。1国への参入を足がかりに域内展開を図る「リージョナライゼーション」の発想が、ASEAN市場攻略の鍵となりそうだ。ローカルメモASEANのハラール市場への関心は、日本の食品メーカーにとっても無視できないトレンドだ。インドネシアの2億人超のムスリム消費者や東南アジア全体の急速な中間層拡大は、和食・加工食品の輸出需要を着実に押し上げている。シンガポールが88機関の海外認証を承認したことで、日本の認証取得ハードルも下がりつつある。中東リスクが高まる中、安定した生産・輸出基地としてASEAN拠点を整備する企業が今後増えるだろう。ハラール認証の取得はコストではなく、成長市場へのパスポートとして再定義する視点が求められる。参考URLFoodNavigator-Asia記事https://www.foodnavigator-asia.com/Article/2026/05/13/asean-poised-as-next-halal-growth-market-amid-middle-east-turmoilTOP Image©Unsplash